消費者庁設立に伴う企業リスクを考える

1.              消費者庁のコンセプト
     事業者中心の縦割り行政から消費者の視点にたった行政への転換
     消費者の権利や擁護・増進に関する政策を行い消費者のための政策を企画立案する
     消費者の安全に資するために消費者事故情報を一元化に集約し、調査・分析を行う
     従来は他の省庁の所管であった消費者関連の法律(表示、取引、安全関係の法律)を所管し消費者のために行政を行う
     所管しない法律については、消費者被害の拡大防止の観点から所管省庁へ、措置の実施の要求をすることができ、所管省庁のない事案(すき間事案)については、消費者が直接、事業者に対し点検等の措置の勧告、譲渡禁止や回収命令等ができることとしている
2.              そこで起こりえる企業サイドのリスク
     消費者の事故情報が一元化されることにより、従来所管省庁や国民生活センターのみで保有していた事故情報が一般化されて社会に還元され、消費者事故に対する社費者やマスコミの関心度が高まることが予想される
→ 従来は2チャンネルやお客様相談室等により消費者からのサインを受け取り、企業経営に反映させることができた → しかし、消費者庁に直接のクレームが増加し、それに伴いいきなりの立入検査による社長へのインタビュー。その回答が不十分のため、疑念を持たれ内部統制の不備から行政処分へと
→ 各省庁間で同一の事故情報を共有することになり、地検・警察・証券取引等監視委員会など刑事事件への流れが生じる可能性も
→ すでに反社会的団体による対応の違い(メールや電話などの対応)を基に消費者庁にクレームを 一度目を付けられると立て続けに起こされる
→ 農林水産省は、JAS法の改正により品質表示基準違反に係わる指示または命令が行われるときは、併せてその旨を公表するとしている(平成21年改正)←行政対策も必要となる
3.  消費者庁の今後を考える
  ・ 民主党政権に変わったことにより、より消費者寄りにシフトしていく
     2009年5月28日の参議院における「消費者問題に関する特別委員会」附帯決議(34条からなる)←民主党が政権獲得前に消費者庁の発足に当たり参議院で決議させたもの を早期に法制化させると考えられる ※1
     民主党政権により、行政機関全般で過剰反応が出ている。国際自動車営業停止、JAL、郵政問題など、企業を取り巻く行政・司法環境はきわめて厳しい状況になると予想される
     顧客・取引先ばかりではなく、あらゆるステークホルダーからの情報が消費者庁に集められることにより、サプライズバッシングや風評・信用毀損が発生する
4.  何が変わる。食品コンプライアンス
     内部告発による食品産地偽装の発覚
     農水省への報告、消費者庁の関与
     消費者庁による立入検査
     消費者庁による排除勧告、消費者庁HPでの開示(対応の遅れなどによる)
     企業HPでのお詫びとお知らせによる開示
     農水省から改善命令
     農水省への改善報告書提出
     消費者庁から不当利益はく奪のための課徴金命令
     上場企業であれば株主代表訴訟提起
      
参議院「消費者問題に関する特別委員会」附帯決議要約
消費者委員会は、個別具体的な事案に対して関係行政機関の長へ報告徴求、資料提出要求を行い、必要に応じて消費者や事業者等から直接情報を得たり、資料提供を受け、その結果として「勧告」を行うことが可能である。
消費者庁は、消費者事故等について、タスクフォースを活用することで、独自の調査を行うことがある。特に、事後原因の究明や再発防止策の迅速化が求められる事案については消費者庁がリーダーシップを持って関係省庁、特定行政庁、警察、消防に対し協力を要請し、事態の把握、沈静化を目的として積極的に活動する
消費者庁は、商品欠陥クレームに迅速に対応するため、商品検査機能を有する各機関の機能強化を図るとともに、必要があれば市場からの排除勧告を促し、また、加害者の財産から不当な収益をはく奪し、被害者を救済するための措置を行う。また、父権訴訟や団体訴訟制度、課徴金制度等を検討、運用に向けた具体的施策を決定する
 父権訴訟とは、行政が違法行為の差し止めを行い、消費者に代わって民事裁判を起こして賠償金を取り立てること